AGF®ストーリー
コーヒーへの想い
「これ、おいしいよ」の会話を生み、つながりの場ができる
~心安らぐ「スティックドリンクバー」~
執筆:2023年11月
読了目安:約6分
近年増加する地震や大雨などの自然災害は、時に人々の日常を脅かすほどの深刻な被害をもたらします。これまで味の素AGF株式会社(以下、AGF)では東日本大震災・熊本地震・九州北部豪雨など、自然災害に見舞われた地域にどう寄り添えるかを考え、自治体や社会福祉協議会の方々と対話を重ね、支援活動を行ってまいりました。
今回は、その活動地域の1つである福島県富岡町での取り組みについて、ご紹介します。
避難生活による心身の影響
大規模な災害が発生すると、その地域の自治体は避難所や仮設住宅などを用意します。特に激甚災害に指定された被災地では、仮設住宅での生活が長期にわたる場合もあり、予期せぬ生活の変化、慣れない暮らし、共同生活のストレスなどにより、心身ともにさまざまな問題を抱えてしまうこともあります。
2011年に発生した東日本大震災と原子力発電所の事故の影響を大きく受けることとなった福島県富岡町では、12年以上経過した現在も復興と町民の生活再建への取り組みが進められています。当時もそして現在も、この地域で生活支援相談や介護予防、自立支援、生活支援などの事業を行っているのが社会福祉法人富岡町社会福祉協議会です。
今回は富岡町社会福祉協議会の皆さんに「ふれあいサロン事業」などのお話をお聞きしました。
富岡事務所 事務局長 宍倉さん:
富岡町社会福祉協議会には富岡町にある富岡事務所(本部)のほかに、いわき支所、郡山支所があります。市区町村の社会福祉協議会というのは小さな組織であり、避難指示や帰宅困難区域の指定などの非常事態がなければ、本来は町をまたいで活動が行われることはありません。しかし震災から12年の時を経ても、このように町を超えて支所を構えている現状が続いているということは、町民の生活はいまだ非常事態の中にあると言えます。
「住み慣れた地域で安心して暮らせるまちづくり」を基本理念に掲げる富岡町社会福祉協議会では、地域の見守り活動の推進や災害に備えた住民ネットワークの構築、心と身体の健康づくりなど、町民と連携を取りながらさまざまな活動に取り組んでいます。
インタビューにご協力いただいた方もそれぞれ異なる東北の地で経験し、混乱が続く日々を体験されていらっしゃいます。
いわき支所の鈴木さんは、当時もいわき市内に住んでいたそうですが、その直後は原発の影響を危惧し、子どもとともに茨城県の親族宅に身を寄せていたそうです。
いわき支所 鈴木さん:
「富岡町社会福祉協議会の職員として働きはじめたのは、震災から2年ほど経った頃。富岡町からいわき市に避難してきた人たちの力に少しでもなれば、と思ったのがきっかけです。いわきのことを知らないと言う方に、病院のことなど、ちょっとした情報を提供したことで感謝されたり、よろこんでもらえたりしたのが嬉しかったですね。」
郡山支所 山本さん:
「私は生まれも育ちも富岡町です。あの時は激しい揺れのあと、電線がバチバチと火花が散ったり、瓦が落ちたりして、そして近くの川が瞬く間に増水していく…。その場では状況がのみ込めていませんでした。とにかく避難所で一夜を過ごし、その翌日から郡山市に避難することにしました。一緒に避難してきた母も私も体調を崩し、子どもたちの精神的なダメージも大きく、本当に大変な月日でした。」
山本さんが現在の仕事に出会ったのは、避難先で富岡町役場が生活必需品を町民に配布する作業を手伝ったことがきっかけだったとのこと。避難先で町民の皆さんと関わりを持てる環境に自分自身が助けられたところがあったと振り返ります。
こうした避難生活における健康の課題に対し、復興支援活動として味の素グループは「ふれあい赤いエプロンプロジェクト」を立ち上げ、料理教室の開催などをスタートさせました。
この活動に賛同したAGFでも、避難所や仮設住宅の集会所などに個包装のスティックタイプのドリンクを設置する「スティックドリンクバー」が企画され、行政や社会福祉協議会、NPO法人などを通じて、ご要望をいただいた地域に無償で提供することになりました。
被害は人と人とのつながりにまで及ぶ
長期におよぶ避難先や仮設住宅での生活は、住環境の変化や慣れない暮らしなどに加えて、これまで当たり前に接してきたご近所同士のつながりが失われてしまうこともあります。こうした人と人とのつながりが途絶えたり、薄れたりすることも心身の負担につながっているようです。
こうした課題が続くなか、富岡町社会福祉協議会では地域の方々の交流を目的にした「ふれあいサロン事業」が行われ、スティックドリンクバーは、その活動の場でご利用いただいています。
富岡町社会福祉協議会の皆さん:
「一杯のコーヒーがあることで、話の弾み方がまるで違います。知らない人同士が言葉を交わすきっかけにもなっているのです。」
「少人数の職員で何種類もの飲み物を用意することは難しく、どの飲み物を選べばよいのかという悩みもありましたが、1杯ずつ違う味を楽しめるスティックドリンクバーなら、利用者1人ひとりの嗜好に沿えるので、安心してサロンを開けます。それに皆さんが自らコーヒーを淹れることで『自分たちのサロン』という意識を持ってくださるのが本当に嬉しいですね。」
コロナ禍では「個包装のため持ち運びに便利で、衛生的」という利便性もよろこばれたそうです。
現在、富岡町の町民は、震災前から住んでいる人と震災後に移り住んで来た人と半々くらいの割合です。そのため「知らない人同士でも、自然とコミュニケーションが生まれるスティックドリンクバーを活用させていただくことで、元の町民と新しい町民の垣根が取り払えるきっかけになれば」と、さらなる町民同士の交流が期待されています。
コミュニケーションの道具としての嗜好飲料のチカラ
スティックドリンクバーを担当しているサステナビリティ推進部の渡邊さんは、継続している理由を「昔からAGFとしてCSR活動を行っており、スティックドリンクバーの活動もその一つ。企業の社会的責任として災害への協力は重要な活動だと思う」と語ります。
スティックドリンクバーはこれまでに全国で累計104台を設置してきました。東北から九州まで、2023年10月時点で48台※が稼働し、他にも「コーヒー教室」や「コーヒーの試飲活動」なども復興支援活動に取り入れています。
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※終了地域は公益災害住宅が完了され、活動を中止された社協が存在します。
渡邊さん:
「被災された皆さまには、さまざまな不安や心配で心が折れそうな時など、温かい一杯で少しでも元気になっていただくことを願っています。それが地域復興へと繋がれば、これほど嬉しいことはありません。この活動を通して、私たちは改めてコミュニケーションの道具としてのコーヒー・嗜好飲料のチカラを信じることができました」
これからも、サステナビリティ活動の一つ「ココロとカラダの健康」の取り組みとして、災害支援など、さまざまな活動を行っています。これからも社会や地域に製品を提供することで、皆さまのよりよい生活に貢献してまいります。
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※組織名や所属、肩書、業務内容、商品情報等を含むすべての記載内容は、各取材及び執筆時点のものです。