執筆:2024年6月
読了目安:約5分
コーヒー豆の生産国には、貧困や治安などそれぞれの事情によって安定的な生産が困難となるケースがあります。また昨今は、地球温暖化による気候変動の進行により、アラビカ種のコーヒー豆の栽培地が現在の50%にまで減少する「コーヒー2050年問題」が指摘されています。味の素AGF株式会社(以下、味の素AGF)は、多くの製品の原料となるコーヒー豆の安定的な調達の一環として、現在「産地共創」を推進。生産国の人々と一緒に知恵を絞って、コーヒー豆の安定した生産と調達に向けた取り組みを続けています。
安定的なコーヒー豆の調達を目的とした支援から
生産地の課題解決に一緒に取り組む「産地共創」へ
味の素AGFがコーヒー豆の生産国との連携に取り組み始めたのは2017年頃のこと。それはまず、南米のブラジルとコロンビア、東南アジアのベトナムとインドネシアの4カ国の農場に「肥料」を提供することから始まりました。
その経緯を生産統轄部の塩尻さんに伺いました。
塩尻さん:
「味の素®」のうま味のベースであるグルタミン酸などのアミノ酸は、サトウキビやキャッサバ、トウモロコシなどの農作物を原料にしています。アミノ酸を取り出す製造過程で生まれるのが発酵液などのコプロ(コ・プロダクツ)です。従来は産業廃棄物として処理されていましたが、農作物への肥料としての効果に加え、サビ病といわれるコーヒー豆の病害を防ぐ効果も一部では確認されています。そこで私たち味の素AGFはコーヒー生産地へこの「コプロ」をコーヒー栽培向けの肥料として提供を始めました。
同じく生産統轄部の臼井さんにも伺いました。
臼井さん:
最初の関心事は、いかにコーヒー豆を安定的に調達するかということでした。しかし現地の生産者や輸出業者の方々との関わりの中で、持続可能なコーヒー豆の調達のためには、まずそれぞれの生産地が抱える悩みや困難を解決することが先決だと気づきました。各国でコーヒー生産に関わる課題はそれぞれ異なっており、現地の方々から情報収集し、生産者や輸出業者などと連携することでその国に応じた適切な支援を行う「産地共創」へと活動の軸足が移っていったのです。
塩尻さん:
たとえばコロンビアでは、長らくゲリラ組織がその収入源である麻薬栽培のために農民から農地を取り上げて追い出すという状況にありました。近年政府がゲリラ組織と交渉して農地を農民に返還する動きが進んでいます。味の素AGFは現地のコーヒー生産者たちによって設立された「コロンビア生産者連合会(以下、FNC)」と連携を図ることで、荒廃した農地や生産設備の整備など、生産者が生産量の拡大や品質向上に取り組める営農支援を進めてきました。
コロンビアのコーヒー生産者を代表する民主的な農業関連NGO団体であるFNCには、現在、56万世帯を超えるコーヒー生産者が加盟しており、その活動収益はコーヒー生産者への支援や社会インフラの整備に充てられています。味の素AGFがFNCと密接に連携することで、コロンビアの生産者が抱える具体的な課題に、より具体的な解決策を提供できるようになりました。
臼井さん:
当社の事業は生産地があってこそ成り立つものです。営農支援はもちろん、事業活動を通して生産地の社会課題の解決を考えていく必要があります。また、気候変動リスクとして、コーヒー豆の生産地が半減する「コーヒー2050年問題」にも直面しています。農業や生産技術だけでなく流通やマーケティングなど、多方面の専門家の知見を取り入れながら、味の素AGF、さらに味の素グループとして未来に向けてどれだけ意義ある取り組みができるかが問われている……私たちはそう認識しています。
世界各地で生産されたコーヒー豆が
一杯のコーヒーになるまでの物語とともに
生産国や生産現場のことを、コーヒーを楽しむ消費者の方々により深く知っていただく。これも味の素AGFの重要な役割の一つだと考えています。
塩尻さん:
さまざまな生産地で栽培されたコーヒー豆が、地球を巡って香り高い一杯のコーヒーになるまで……普段私たちはそうしたプロセスについてあまり意識せずにコーヒーを味わっています。しかし「産地共創」を進める中で、さまざまな困難に立ち向かって品質の高いコーヒー豆を生産する人々に出会い、そのストーリーを多くの方に知っていただきたいと考えるようになりました。「ちょっと贅沢な珈琲店R」ブランドで発売した「ちょっと贅沢な珈琲店REVER BLACKR」はそうした私たちの思いをカタチにした特別な商品シリーズです。先ほどお話ししたFNCとの産地共創を図っているコロンビア・バジェデルカウカ県のほか、日系ブラジル人農園主が運営するブラジル・ミナスジェライス州、さらにエチオピア・シダマ地方、ミャンマー・ユアンガン地区のそれぞれ個性豊かなアラビカ種生豆を原料としたシングルオリジンコーヒー4種をラインナップしました。各産地の情景をイラストにしたパッケージとともに、コーヒーがお手元に届くまでの物語を味わっていただければと思います。
現在、世界のコーヒー豆の市場は劇的な成長を見せています。そしてコーヒー生産増大による社会的・環境的影響を懸念して、オーガニック、フェアトレードといった持続可能な生産方法の需要が高まっています。
味の素AGFは今後も「産地共創」の取り組みをより多くの国で、多方面から展開し、生産地の声をたくさんの方にお届けしたいと思っています。
- 組織名や所属、肩書、業務内容、商品情報等を含むすべての記載内容は、各取材及び執筆時点のものです。
こちらのコラムも読まれています

つながる笑顔、広がる挑戦
〜群馬クレインサンダーズ×味の素AGF 株式会社バスケットボール&チアダンス体験イベント〜

「未来をつくる」チャレンジ風土醸成を目指して
〜AGF®チャレンジアワードが育む、挑戦の連鎖〜

父の日に贈る、親子で楽しむ木工クラフト体験
〜群馬クレインサンダーズ×味の素AGF(株)による地域社会貢献活動

秋田、山形、宮城。東北地方で広がる脱プラスチックへの挑戦
〜自治体と味の素AGF東北支社の連携〜

試作を重ねた味づくり!新たなフレーバー「フルーツティー」登場
~「ブレンディ®」ポーションの開発者の想いとおすすめアレンジ~

唯一無二の和紅茶を求めて
~静岡の製茶メーカーとともに挑む製品化と製茶産業の課題~

「バスケで群馬を熱くする」
その想いとともに群馬クレインサンダーズと味の素AGF(株)がタッグを組む

商品化で見えた住民の期待!
徳之島コーヒーの可能性を育む熱意と協力の輪

徳之島で広がるコーヒー栽培への
知的探求心と地域との連携
~コロナ禍を乗り越え、再始動~

コーヒー豆ごとに異なる違いを「いつもと同じ」品質に
味の素AGF株式会社のおいしさを育む
AGF関東株式会社の生産現場

機械と人、人と人との連携
味の素AGF株式会社の「安心品質」を生む
AGF鈴鹿株式会社の生産現場

持続可能なコーヒー豆の生産地に向けた
「産地共創」の展開

一問一答形式でご紹介!
味の素AGF(株)の新社長・島本 憲仁ってこんなひと!

パパでもママでも家庭とキャリア、どちらも大切
社員3人の「育業」ストーリー

「ちょっと贅沢な珈琲店®」レギュラー・コーヒー
地元ブレンドシリーズの誕生物語
~地元で好まれるコーヒーの味を探る~

今春デビューの《「ブレンディ®」マイボトルスティック》シリーズに込めた思いとパウダードリンクの可能性

「AGF®プロフェッショナル」が手がける
“プロ向け”の商品開発とソリューション提案

「ほっとするエコ」マークって何ですか?
~環境配慮であることを知ってもらうためのシンボルマーク~

社員一人ひとりがいきいきと働ける職場づくりへ!
味の素AGF株式会社が考える健康経営への取り組み

「これ、おいしいよ」の会話を生み、つながりの場ができる
~心安らぐ「スティックドリンクバー」~

「これまで」を築き上げてきた人たちも
「これから」を築いていく人たちも
みんなを紡ぐ50周年記念プロジェクト

「冷たい牛乳にサッと溶け、かつ濃厚」をさらに追求し、お客さまの期待に応えたい
~「ブレンディ®」スティック クリーミーアイスシリーズの開発者たち~

神代の昔から守られてきた清らかな水のために
水への想いがご縁を結んだ「上賀茂神社の森」

利根川水系荒砥(あらと)川の
源流域を舞台とした
「AGF®ブレンディ®の森」群馬の取り組み

それは鈴鹿川の水源の森で始まった
「AGF®ブレンディ®の森」鈴鹿の挑戦

彩られたドリンクディスペンサーの前から、つながりが生まれる。
何かを感じ、伝えたくなる場を創りたい。

「環境にいいことをもっと身近に」
大分県の環境活動と「ブレンディ®」ザリットル

力を合わせて国産コーヒーの産業化を目指す
~徳之島コーヒー生産支援プロジェクト始動~

「コーヒーのプロを極める」という終わりなき道
~社内資格「コーヒー検定」~

「徳之島をコーヒーアイランドに。」
生産者の想いと挑戦

お客さまの生活の課題とプラ使用量削減
どちらも大切に

突然の臨時休校
コロナ禍で社員が直面した子育てと仕事の両立を振り返る




